母世代に浸透する“ガラケー”、活用度は個人差大
「これ、77歳の母からのメールなんですけど、女子高生みたいでしょう?」と苦笑する、川田陽子さん(仮名、東京都/50歳)。実家の母から送られてきたメールは、ハートや笑顔など意味のわかりやすい絵文字の他に、テンションが上がったときには上向き矢印を入れるなど、絵文字の使い方が堂に入っている。画面の文字が大きく、機能もシンプルな高齢者向けのフィーチャーフォン、いわゆる“ガラケー”を両手で持ち、目を細めながらメールを打つ母の姿を思うと、つい笑みがこぼれると安藤さんは話す。
今回の調査では、平均年齢約70歳の母親世代でのフィーチャーフォン所有率は約70%に達し(グラフ①)、すでに当たり前のツールとなっていることがわかる。しかしその活用度は、前出のように絵文字も使いこなす人から、「母は外出先に携帯を持っていっても電源を切っている。 メールの使い方を何度教えても使いこなせない」(神奈川県/48歳、母の年齢:73歳)といった人まで、かなりの差があるようだ。
娘世代では、スマートフォン所有者が33.8%(グラフ①)。3人に1人はスマホを持っているという現状が明らかに。母世代では7~8%にとどまっている。
ノートPCは、母世代では20%前後にとどまっているが、娘世代での所有率は60%を超えている(グラフ①)。タブレット端末は娘世代でも15.3%とまだ浸透していないが、母世代との所有率の差が少なく、PCよりも操作が容易であることを考えると、今後の伸びが期待できるIT機器の一つといえそうだ。
無料のツールや割引を駆使して頻繁につながる母娘
グラフ②と③は、実家の母や姑と同居していない娘世代に、それぞれとの連絡の頻度をたずねた結果だ。
これを見ると、娘たちが実家の母と通話もメールもかなり高い頻度でやりとりしていることがわかる。実家の母と、週に1度以上通話している人は約半数。メールのやりとりも、週に1度以上という人が同じく約半数となっている。姑との通話やメールの頻度とは比較にならない。
その頻度に比例し、通信各社が提供する、携帯電話の家族向け割引サービスを利用しているのは、「実家の母と」という娘世代が41.6%。姑と利用している人は16.0%となっている(グラフ④)。
しかし、実家の母との通話に使うツールを複数回答でたずねると、固定電話も57.2%(グラフ⑤)と根強い。アナログ派の母や、在宅時の母と通話するには、固定電話が確実なのかもしれない。
また、LINEやスカイプ、SNSのメッセージ機能といった、通信会社の違いにかかわらず無料でやりとりできるサービスを利用する母娘も少数ではあるが存在する。
仲良し母娘は、娘が嫁に行って住居を別にしても、さまざまなツールを使って頻繁につながっていることがわかる。
母世代のICTを進化させるのは、孫!?
「子供が産まれたので、離れて暮らす姑が“孫の写真をたくさん見たいから”と、スマホに買い替え、LINEを始めた。もともと機械に弱い人なので、メールの設定、LINEの設定に手こずりまくって大変だったが、“孫見たい!”パワーは強力で、徹夜して自力で設定を終えていて、ビックリした」(東京都/32歳、姑の年齢:62歳)
娘世代にLINEなどスマートフォン専用のアプリケーションが浸透する中、親世代でスマホに関心を持つ人は、20%前後となっている(グラフ⑦⑧)。フリーアンサーには、上記のように孫がきっかけでLINEやスマホに興味を持つ母親世代のエピソードがいくつか見られる。
NTTドコモでは、高齢者向けの「らくらくスマホ」および「同2」向けにLINEアプリの提供を10月から始める予定。本来はアプリをダウンロードできないこれらの機種だが、機能を制限し、有料スタンプや課金ゲームなどのサービスは削除し、高齢者が安心して利用できる形で提供する。
こういった動きにより、「LINEはメールより使いやすいが、スマホの操作が難しいから」と敬遠していた高齢者にも、利用が広がっていく可能性はあるだろう。
また、IT機器を購入する際に、娘に相談する母親世代は半数近い(データ⑨⑩)。フリーアンサーからは、手持ちの機器の操作について、娘に聞いてくる母親の、笑いを誘うエピソードも目立つ。IT機器の存在自体が、さらに母娘の接触を増やしている例も見られる。
孫をきっかけに、母親(祖母)世代のICT(Information and Communication Technology)が進化し、そこからさらに母娘の関係が密になる。
三世代のコミュニケーションと、IT機器の発展は、深く関係しているようだ。
爆笑、感動…母娘のITエピソード
<思わず笑ったエピソード>
フリーアンサーから、母と娘のITエピソードを紹介。
●最近ラインを始めたので義母と同じゲームをして2人で 点の取り合いで盛り上がっている。
(大阪府/36歳、姑の年齢:63歳)
●一生懸命押すので、長押しになり、電源を切ってしまって、画面が消えちゃったとあわてる。
(千葉県/55歳、母の年齢:79歳)
●姑と連絡が丸2日とれず、家族全員で心配していたら、携帯を自宅に置いたまま、友達と旅行に出かけていた。
(大阪府/41歳、姑の年齢:75歳)
●自宅でケータイ電話通話中の母が 鳴ってる固定電話に出られないからと妹に向かって「ちょっとこの電話出て~」って大騒ぎ。妹が出てみるとなんとそのケータイから母が自宅固定電話にかけていた! 「あれ?私だったの?」と天然な母。
(兵庫県/38歳、母の年齢:64歳)
<感動のメールエピソード>
●6年前、母はずっと携帯が欲しかったようですが、父が賛成しなかったので持てずにいました。 父と母が上京したときに、私が母の誕生日プレゼントということで、強引にショップに連れてって、携帯を購入してあげました。 そのときの嬉しそうな母が忘れられません。
(東京都/35歳、母の年齢:75歳)
●子供が生まれてすぐの頃、子育てや家事にいっぱいいっぱいだった私に、「今日、買い物の帰り道でこんなキレイなものを見つけました!少しのんびりした気分になってくれたかな?」というメールを夕焼けの景色の画像付きで送ってくれました。 押し付けがましくない、さりげない義母の優しさがとても嬉しかったです。
(神奈川県/35歳、姑の年齢:71歳)
●私が結婚して家を出る時に実家の母が携帯を持つことにしましたが、最初は全くメールができず、頑張って教えていました。 実家を出てからは、なかなか教えてあげられる機会もなくなり心配していたんですが、一生懸命練習したようで、今では漢字も絵文字も使えるように。とても感動しました!
(千葉県/38歳、母の年齢:69歳)
●3人目出産で入院中、長女・次女が私をすごく心配してくれてる様子を、実母がメールしてくれて、「こんなに慕われるあなたはいい母親ね」と書かれていた。
(大阪府/34歳、母の年齢:64歳)
◇回答者プロフィール
平均年齢:42.57歳
既婚:87.4%、未婚12.6%
実家の母の平均年齢:69.0歳
姑の平均年齢:70.3歳
自分の親世帯との同居:12.0%
夫の親世帯との同居:5.7%
※2013年8月、リビングWebでの調査。有効回答数:817