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Report10 費用と信頼性がカギ 多様化する高齢者向けサービス

約4割が単身で暮らす親を持ち、体調を案じる

団塊世代が60代後半に入り、ますます加速する高齢化社会を背景に、高齢者の見守りサービスが多様化している。

湯沸かしポットや携帯電話など日常的に使う電化製品の使用状況を通知する商品、自治体やガス会社などが水道やガスの使用状況を手掛かりに生活の変化を知らせるサービス、スカイプなどを使用した対面式の見守りサービスなど、さまざまな企業や自治体が参入している。

また、高齢者向けに栄養や味付けを工夫した食事の宅配サービス、手が届かない場所の掃除など高齢者には困難な家事を代わりに行う代行サービスなども増えてきている。

今回の調査で、「単身で住む親はいない」と答えた人は約6割。残りの4割は、実家の母や姑など、単身で暮らす親を持っている(グラフ①)。

離れて暮らす親とは月に一度以上連絡を取っている人が多いが(グラフ②)、やはり心配は尽きないようだ。その内容は、1位が体力・足腰の衰え。2位は体調の急激な変化。3位は病気の治療となっている(グラフ③)。
こまめに連絡を取っていても、離れて暮らしていては急な出来事への対応が難しい。
また、「2日に1度は電話で会話しているが、子供に負担をかけないようにと思っているようで、本人からは話をしないのでこちらから“○○欲しくない?”などと聞くようにしている」(宮城県/39歳)、「こちらが病気の時には駆けつけてくれるが、自分が病気でも言わないので心配」(東京都/36歳)など、子供に負担をかけまいとする親の心理が正しい現状把握を阻んでいるケースも少なくない。

親世帯の利用にも、娘の意見は影響大

では、単身で住む親を持つ娘世代は、多様化するこれらのサービスをどのように見ているのか。

娘世代に、高齢者向けのサービスに対する興味を聞いたところ、見守り・宅食・家事代行すべてにおいて約半数が興味を持っていることがわかった(グラフ④)。

ことに見守りサービスは関心が高く、その中でも特に注目されているのは、定期的な訪問による見守りサービス、湯沸かしポットなど生活機器を使ったサービス、水やガスの使用量から生活の様子を知るサービスとなっている(グラフ⑥)。

しかしながら、これらのサービスについて、親とその話をしたことがある人は15%未満と非常に少ない(グラフ⑤)。
その背景には、「以前は元気だった姑がここ数年元気がないのが気になるが、本人はそれについて頼ってきたりしないのでどう切り出していけばいいのかわからない」(神奈川県/45歳)、「我慢したり、まだまだ自分はできるんだと過信しているところが心配です。できなかった時のションボリ感を味わってほしくないんです」(千葉県/40歳)など、気丈に頑張っている親世代への気遣いも見える。

また今回の調査では、実際に親世帯がサービスを利用していると答えた人は、どのサービスも軒並み1桁台にとどまっている。興味はあっても、実際の利用に至るにはいくつかのステップがあるようだ。

これらのサービスを実際に利用するきっかけとはどのようなものなのか。
Uさん(神奈川県・44歳)は、72歳の父親と70歳の母親の世帯で、食事の宅配サービスと、掃除の代行サービスを利用しているとのこと。
「食事の宅配は、父が手術を受けてから外食が困難になり、母が毎日3回食事を作る負担を軽減するために始めました」とUさん。夕食のおかずのみ2人分を週に5日間宅配で、費用は1カ月5100円。
掃除の代行は、まだ自身が実家にいる頃、給水管や排水管の掃除が必要で業者に依頼したことがきっかけで、両親のみになった現在も年に何回か利用している。両親は自宅から5分と近くに住んでいるものの、Uさん自身が仕事をしているため、頻繁には手伝いに行けない。

今はまだ両親そろって自分で動けるので、見守りサービスの利用は想像できないが、「どちらか一人になってしまったら検討するかもしれない」と話す。

宅配と掃除代行の利用については、いずれも事前に母親からUさんに相談があったという。

「もちろん父にも相談はするようですが、母がまず初めに相談を持ちかけるのは私のようです。特に掃除代行の場合は、家の中にどんな人物が入ってくるか心配なので、最初は私がいるときに来てもらいました」とUさん。

親世帯が利用するサービスであっても、その業者や内容の決定には娘の意見が強く影響している様子。

高齢者向けサービスにも、仲良し母娘の連携は発揮されるようだ。

月額1万円未満、信頼性の確保で子供世代が動く!?

前出のUさんの場合も、サービスの利用のきっかけは母の発案だった。
娘世代にとって、これらのサービスに興味は非常に高いのに、情報収集など具体的な行動につながらないのはなぜか。

これらのサービスを利用するにあたり、気になることを聞いたところ、金銭面が最上位に挙がった(グラフ⑦)。

とはいえ、自分たちがお金を負担してもいいと考える娘世代は約30%おり、負担できる費用は月額1万円未満が多数(グラフ⑧⑨)。

次に、サービスを提供する業者の信頼性が気になる様子がうかがえる。

「代行者による犯罪などを誘発する恐れがあることが心配」(埼玉県/54歳)など、70歳以上の高齢者がターゲットになりやすい詐欺などの被害を心配する声も高い。

こういったサービスは料金が高く、トラブルが多いというイメージを抱いている人が多いようだ。

「親の作業を奪うことで、痴呆や身体的な衰えが加速するのではないか」(神奈川県/31歳)といった声もあり、楽をさせてあげたい半面、いつまでも元気でいてほしい気持ちとの葛藤も娘世代にはあるようだ。

また、「親世代が他人に世話をしてもらうことに抵抗を感じるのでは」と考える人は多いが、「親の世話を他人に任せることに抵抗を感じる」という人は少なく、他人の世話になることを嫌う親世代と、外注を活用してスマートに暮らすことに抵抗のない娘世代とのギャップが見て取れる。

金銭面がクリアでき、プライバシーや信頼性が確保できて、親世代が「他人のお世話になっている」という感覚を持たないような高齢者向けサービスなら、娘世代が積極的に検討するようになるかもしれない。

離れて暮らす親の見守りエピソード

離れて暮らす親を持つ娘世代に、親の暮らし向きを知るためにしていること、困ったことなどのエピソードを聞いた。

●実家の両親は携帯メールやパソコンができるので、時々メールで近況を聞くようにしている。姑宅は集合住宅で近所とのつながりがあるので、無理に近所に来させるようなことをするより、夫に電話をかけてもらって近況を聞くなど親子間での気持ちでのつながりを続けていくのが良いと思っている。義父の母が義両親宅に同居した途端に認知症が進行したことがあり、姑の社会的な関係を断つようなことが一番良くないと感じる。(大阪府/43歳)

●パソコンでスカイプができるように両親に教え、顔を見ながら話が出来るようにしたこと。孫の顔や様子も見せることができるのが良いと思う。(東京都/31歳)

●一人で家にいてシャワーを浴びるときなどは、お風呂に入る前と出てきてから必ず電話をもらう。不整脈があるのでお風呂の温度差が心配。遠くに運転して外出する時などは無事に着いたか連絡をもらう。(神奈川県/48歳)

●ご近所付き合いを大切にしているので、何かあった時に安心。 親の友人の連絡先を聞いておくようにしている。(埼玉県/31歳)

●それぞれの実家の親とラインのグループを作ってやりとりしている。 既読かどうかを見ることで携帯を見ているかがわかって良い。(兵庫県/28歳)

●電話をナンバーディスプレイサービスに加入させ、非通知は拒否、登録していない電話番号には出ないようにしてもらったこと。(神奈川県/54歳)

●何か不調があっても隠して言わない両親なので、こちらから強引に聞き出すようにしている。 タブレットの操作を教えて、 毎日コミュニケーションをとれるようにした。大画面で孫の動画を見られるので喜んでくれた。SMSを利用して、既読かどうかわかるので安心できる。(兵庫県/31歳)

◇回答者プロフィール
平均年齢:43.7歳
既婚:85.5%、未婚:14.5%
<親の平均年齢>
実家の父:71.2歳、実家の母:71.1歳
舅:72.1歳、姑:71.7歳
<親世帯の住居との距離>
●自分の実家
同居している…10.8%
30分以内で行き来できる距離…23.3%
1~2時間で行き来できる距離…14.7%
行き来には2時間以上かかる…31.0%
自分の実家はない…3.4%
●夫の実家
同居している…4.3%
30分以内で行き来できる距離…20.5%
30分~1時間で行き来できる距離…13.5%
1~2時間で行き来できる距離…13.0%
行き来には2時間以上かかる…29.7%
夫の実家はない…19.0%
※2014年1月Web調査。有効回答数745

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