日本人女性の9人に1人が罹患するという「乳がん」。けれども、乳がん治療のため乳房摘出を行ったときのケア「アピアランスケア」(=病気やケガなどでの見た目の変化による苦痛を和らげるケア)について、知る機会は少ないかもしれません。
株式会社サンケイリビング新聞社と株式会社リビングくらしHOW研究所では、10月1日の「ピンクリボンデー」を前に、装着式人工乳房を提供する株式会社カノアクルーの協力を得て、乳がんとアピアランスケアに関する意識調査を実施。アピアランスケアや乳房摘出後の選択肢について、まだまだ知られていない現状などが見えてきました。
※調査協力/株式会社カノアクルー https://kanoacrew.co.jp/
調査方法:リビング新聞の公式サイト「リビングWeb」のメール会員へのWEBアンケート(全国)
有効回答数:496人(女性463人、男性33人/平均年齢:50.69歳)
他人事ではない!
約6割が自身や家族、知人などに「乳がん」の診断
Q1 あなた自身または身の回りの人に、「乳がん」の診断を受けた経験がある人はいますか? ※複数回答(n=496)
Q2 あなた自身または身の回りで「乳がん」の診断を受けた人で、乳房摘出手術を受けた人を教えてください。 ※複数回答(n=275)
乳がんの診断を受けた経験については、「思い当たる人はいない」が40.7%で、それ以外の約6割が、自分自身や身近な人が乳がんの診断を受けたと回答。さらに、乳房摘出手術を受けた人について聞くと、「友人・知人」33.1%、「家族以外の親類」16.0%、「自分自身」15.3%。乳がんが他人事ではない現状が伺えます。
乳房摘出で不安に感じたのは
「痛み」「体の不調」「行動制限」など
Q3 ご自身が乳房摘出の手術を受けた経験のある人に伺います。手術後の変化に関して、不安を感じたことを選んでください。 ※複数回答(n=41)
Q2で自分自身が乳房摘出手術を受けたことがあると回答した41人への質問。不安を感じたこととしては、「手術後の痛み」63.4%、「身体のバランスが崩れて不調が出る」53.7%と、乳房を摘出したことによる直接的な体の痛みや不調が1位・2位。次いで「外出や行動に制限が出る」36.6%、「好みのおしゃれができなくなる」「自分に自信が持てなくなる」各26.8%など、生活の質(QOL=Quality of life)に関わる不安があったという回答も多い結果となりました。
「アピアランスケア」について
認知しているのは1割弱
Q4 アピアランスケア(病気やケガなどでの見た目の変化による苦痛を和らげるケア)という言葉を聞いたことがありますか? ※複数回答(n=496)
Q5 乳房摘出手術後のアピアランスケアのうち、今まで知っていたものを選んでください。 ※複数回答(n=496)
「アピアランスケア」という言葉自体については、「今回はじめて知った」「聞いたことはあるが詳しくは知らない」を合わせて約9割で、ほとんど認知されていない状況と言えそう。一方、アピアランスケアという言葉を知っている人では、「パッドによる補正」66.3%、「乳房再建手術」58.1%、「装着式人工乳房」33.1%と、具体的なアピアランスケアについてある程度知っていると回答しています。
装着式人工乳房は、
「摘出後の選択肢につながる」「温泉にもそのまま入れる」
Q6-1 乳房摘出後、乳房再建や下着で補正する以外の選択肢としてシリコン製の「装着式人工乳房」(※)も。このアイテムについて興味を感じる点を選んでください。
※複数回答(n=496)
Q6-2 シリコン製装着式人工乳房について、もっと知りたいと思う点があれば選んでください。 ※複数回答(n=496)
Q6-3 女性の方に伺います。あなたが乳がんの診断を受けた場合、装着式人工乳房について詳しく知りたいと思いますか。(n=463)
Q7 装着式人工乳房やアピアランスケアについて思うことは?
●装着式人工乳房のことを初めて知り、とても驚きました(45)
●乳房再生について、いろいろな選択肢があると良いと思う。アピアランスケアについて、もっと広く知られていって欲しい(42)
●乳がん治療で乳房摘出を行ったときのケア、なかなか知る機会がないです。装着式人工乳房について詳しく知りたいと思いました(51)
●選択肢が広がり、思い切って手術ができるようになるかもしれません。 そのことによって助かる命も増えるかもしれないと思います(57)
●乳房再建手術より体の負担が少なく、温泉やファッションを楽しめるのはとても良いと思う(52)
●温泉に入れるのはうれしい。(装着式人工乳房は)ずっと使えるものなのか、お手入れは簡単か、これから調べてみたい(36)
●自分が当事者だったとして、乳房がなくても堂々と生きていきたいが、時には乳房があるように見せる必要が出てくることもあるだろうな…と実感を持って考えさせられた(33)
●他者からの視線が気になる方が多いのにも関わらず、必要とされるはずのアピアランスケアが遅れていると感じる(51)
●手術する病棟などに(装着式人工乳房の)パンフレットなどあれば患者さんは相談しやすいと思う(51)
●乳がんと診断されて心が病んでいるところに、見た目の変化を受け入れるのはなかなか厳しいと思う。そんな時色んな選択肢があれば救われる方がいると思う(46)
シリコン製の装着式人工乳房について、「乳房再建手術をしない人の助けになる」64.3%、「温泉などにもそのまま入れる」63.9%など、好意的に受け止めた人が多いよう。価格や耐久性、メンテナンス方法などについて知りたいと回答した人も多く、乳がんの診断を受けた場合、「詳しく知りたいと思う」と回答した人が約6割という結果に。
またフリーアンサーでは、「選択肢が広がることで思い切って手術ができるかもしれない」「乳房再建手術より体の負担が少なく日常生活を楽しめる」「アピアランスケアについて知りたい」などの声があがりました。
万一、乳房を失っても多彩な選択肢があることは、乳がん患者にとって有益なこと。装着式人工乳房やアピアランスケアについて、周知が広まることが、求められているといえそうです。
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