シティプロモーションに取り組む自治体が増えている。ところで、シティプロモーションは誰のために行われるのか。
仕事柄、多くの自治体のシティプロモーション戦略を読む。そのなかに、地域持続のために適切な対象をターゲットとして定住を獲得するという内容の文章を見ることがある。「地域の持続・発展のために、30 歳代の子育て世代が求められる。だから、云々…」というものだ。
本末転倒である。シティプロモーションは地域に住む人々の持続的な幸せのためにある。
シティプロモーションとは、どのような人がこの地域(まち)で幸せになれるのかを考えるものだ。30 歳代の子育て世代みなが同じ地域(まち)で幸せになれるわけではない。
私たちの地域(まち)は誰を幸せにできるのかを、地域(まち)の魅力や可能性から考える。
そのうえで、その地域(まち)に住めば、その地域(まち)を訪れれば「しっくりくる」だろう人を対象に、地域(まち)を知ってもらい、いかに「しっくりくるのか」について関心を持ち、詳しい状況を、共感を持って理解してもらう。
そのための取り組みがシティプロモーションである。地域(まち)のために人がいるのではない。人のために地域(まち)があるはずだ。
河井 孝仁さん
東海大学文化社会学部広報メディア学科教授
PROFILE:
博士(情報科学・名古屋大学)。静岡県職員等を経て現職。専門は行政広報論、シティプロモーション。公共コミュニケーション学会会長理事などを務める。著書に『シティプロモーション 地域の魅力を創るしごと』(東京法令出版)『シティプロモーションでまちを変える』(彩流社)他多数。