東温市の移住定住促進プロモーションがスタートしたのは2017年から。どちらかというと他の自治体よりは遅めのスタートと言える。そんな中、2018年12月初旬に同市は「都市圏プレスツアー」を実施した。
通常、四国の一市町村が首都圏のプレスを召致するのは難しいといわれているが、東温市は東京・大阪首都圏からメディアを呼び、そのツアーの様子がさまざまなパブリシティで情報発信された。
何故、そんなことができたのか?
それは、全国にフリーペーパーをネットワークする「えひめリビング新聞社」と組んだからだ。東温市は、各地で地域密着で発行するメディアに目を付け、そのネットワークを活用することで東京・関西圏等の首都圏都市からのメディア召致が成功したのだ。
「都市圏プレスツアー」の概要は日帰りで取材できる日程で実施された。内容は観光地視察が中心ではあったが、ツアーに市職員だけでなく、移住コンシェルジュや地域おこし協力隊もアテンドメンバーに入り、移住者目線で市の魅力を紹介したのが特徴的だ。都会にはない、“田舎(里山)”をとことんアピールする中で、全ての見学場所で移住者や新しいことに取り組んでいる地元人と会わせた。
生活実感を伴った説明、これからの夢を語る移住者、素朴で控えめな地元人との交流を中心としたツアーだったことが好印象となり、各メディアで東温市の取材記事が掲載されたのだ。
(※ツアー概要は下記)
松山空港から車で45分。東温市は隣接する松山市への通勤・通学者のベッドタウンとなっている人口約3万4000人のまちだ。東洋経済の2018年版都市データパック「住みよさランキング」で愛媛県内ナンバーワンに選ばれるだけあって、人口も県内全域で減少する中、微減傾向で推移されており、ここ数年は転出者より転入者の方が多い「社会増」を続けている。
人口増(社会増)の理由は、子育て環境整備と支援の手厚さ、市中心部からすぐに手の届く自然など、子育て世代にとって嬉しい都市近郊田園都市の魅力を備えていること。また、市の中心地に愛媛大学医学部附属病院があり、医療施設も多く、人口1万人当たりの医師数が全国トップクラスという充実した医療環境も移住・定住の決定打になっているという。
取材をすると、どちらかというと控えめな人が多く、新しいコト・食・人・文化を受け入れる“東温気質”を感じたのだが、それが住みよさにも繋がっているのだろう。
「さくらの湯観光物産センター」
良質のお湯で名高い「さくらの湯」に隣接する産直所。地元の人たちが里山で育てた季節のとれたて野菜、果物、花、米などを購入。柿5キロ・300円、ブロッコリー100円など、都会の半額以下の値段にビックリ。住民が羨ましい。
滑川(なめがわ)地区「滑川渓谷」散策
もう一度、ゆっくりプライベートで訪ねたい場所。年月をかけて浸食された岩肌や全長1キロにも及ぶナメラと呼ばれる美しい川床。水と奇岩が織りなす自然の芸術美は春夏秋冬の全ての季節で全く違う景色になるという。最近、渓谷添いの「さざれ石」が注目を集め、石・岩マニアから熱い視線が注がれている。
帰り道、渓谷入口の観光案内所、滑川清流ハウスで、地域おこし協力隊の松井駿作さんが淹れる『清流ブレンドコーヒー』を頂く。滑川渓谷の水に合わせて豆をブレンドしたという爽やかな香りのコーヒーは秀逸。
河之内(かわのうち)地区「Café kuromori(カフェクロモリ)」
地域交流拠点として古民家をリノベーションした「カフェクロモリ」。店内にはアンティークな家具が並び、窓からは美しい棚田が広がる。同店長の近藤哲平さんは月曜〜木曜は車関係の仕事をし、金~日曜はお店というユニークな生活。カフェの中には近くでバラを栽培している髙須賀年男さんの「クロモリ花店」が同居していて、なんともいえない癒しの空間になっている。
それにしてもハヤシライスとチーズケーキは本当に美味しかった。東温市の名物グルメに指定すべき。
◇河之内(かわのうち)地区「Café kuromori(カフェクロモリ)」
奧松瀬川(おくませがわ)地区「ほっこり奧松」
若い人たちが少なくなってさみしくなった…。それなら外から人にきてもらおうと取り組んだのが、奧松瀬川地区。その地域交流拠点としてあるのが「ほっこり奧松」。
地域おこし協力隊と地元人が世話役となって、産直販売、学生やプロも参加する山の音楽会、本格ピザ窯を使ってのピザづくり体験教室、手芸教室など大小たくさんのイベントを行っている。自然広がる静かな地区ではイベント教室がエッセンスとなり、人の交流が盛んであった。
井内(いうち)地区 農家レストラン「ぼたん茶屋」
自然に囲まれた農家レストラン「ぼたん茶屋」は、どぶろく工房も併設。隣接の古民家「井内の里・人空田(じんくうでん)」は自炊ができる宿泊施設。移住体験ができ、市外の人にも利用されている。
井内地区自慢の棚田米と地元の水で試行錯誤しながら作られる「どぶろく ながい」は、ワインと同じように毎年、味が違う。そこが大手メーカーのとは違う人気のツボ。
東温イタリアン「 ロカンダ デル クオーレ」
“東温イタリアン”の発祥となったといわれるレストラン。
オーナーシェフ・青江博氏は、東温市にイタリアン文化を広めた人物。 食材・気候がイタリアに似ているのが気に入り、大阪から移住してきた。 地元の採れたての野菜をたっぷり使ったメニューが人気。日本一の生産高を誇る愛媛のハダカムギは、ここ東温市が主要産地。ハダカムギを焙煎して作ったオルゾコーヒーは東温市ならでは。
「坊っちゃん劇場」
市内中心地にほど近い「坊っちゃん劇場」。敷地内には天然温泉や大型スーパーマーケット、レストランなど、広い駐車場などもある、市民が一日遊べる場所。
劇場支配人の平野淳氏は北海道出身の元・俳優だが、同劇場が常設劇場であり、好きな演劇だけで生きていける環境がある東温市に可能性を感じて移住した。同じような理由で東温市に移住した人は、他にも何人かいると言う。隣接する「東温アートヴィレッジセンター」は、舞台芸術をテーマに独自の魅力を創出するまちづくり施策『アートヴィレッジとうおん構想』の拠点。市民が中心になって活動しているのが特徴だ。
東温市移住・定住支援ポータルサイト https://toon-iju.com/
東温市 http://www.city.toon.ehime.jp/
そこに住む人々は気づかない「まちの魅力」は、移住する立場からの視線、また客観的な第3者の立場からの視線でとらえると、輝いて見える。「まちの魅力」の発信にはそんな新しい視線が必要なのかもしれない。
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